SMPP調査レポート① 日本では、イデオロギー的傾向を超えて、マスメディアへの信頼度が高い

2024.05.01
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2023年3月、第1回スマートニュース・メディア価値観全国調査(SMPP調査)が実施されました。今後10年にわたり、2年ごとに、日本人の政治、社会に対する意識や価値観、メディア接触との関係などを調査していきます。スマートニュースメディア研究所では、研究所のウェブサイトで、調査によって明らかになった点を随時、項目ごとにリポート形式で報告していきます。

まず初回は、マスメディアの信頼度、どんなニュースを重要と考えるか、どのような情報源を頼りにしているのか、などについて焦点を当てました。(スマートニュース メディア研究所)

主要なFindings
・全体では、7割近くが「マスメディアを信頼している」
・保守かリベラルかというイデオロギーと、マスメディアの信頼度の相関がみられない(米国と違う傾向)
・ただ、年齢層が若くなるにつれて、マスメディアへの信頼度は低くなり、18~39歳の層では4割以上が「マスメディアを信頼していない」と考えている
・一方で、18~39歳の層でも6割近くが、新聞やテレビで大きく取りあげられるニュースを「重要だ」と認識している

米国では、保守・リベラルでメディア信頼度に大きな差

米国では、マスメディアの「信頼度」は、保守層かリベラル層かといった、その人が持つイデオロギー傾向によって、大きな差があることが知られている。

ギャラップ社が2022年に米国で行った調査によると、「ニュースを十分かつ正確、公平に報道するという点において、あなたは新聞、テレビ、ラジオといったマスメディアを信頼していますか」という問いに対して、「信頼している」(「Great deal」と「Fair amount」の合計)と答えたのは、民主党支持層(リベラル層)に限れば70%と高いが、無党派層では27%、共和党支持層(保守層)では14%と、大きな差がある。(2023年9月の調査では民主党支持層で58%・共和党支持層で11%までそれぞれ下落)。

 

図1

 

日本の状況はどうか。SMPP調査で、ギャラップ社と同様の質問をしたところ、マスメディアを「とても信頼している」「まあ信頼している」と答えた人の割合は、全体の中で約7割だった(図2)。

 

図2

図2

 

SMPP調査では、自身の政治的立場について「リベラル」から「保守」まで11段階に分けて、自分はどこに位置すると思うかを尋ねている。0〜4をリベラル層、5を中間層、6〜10を保守層と分類すると、その割合は、リベラル層が29%、中間層が23%、保守層が48%となった(図3)。
(「わからない」と答える人も多かったが、米国の類似調査と比較するために「わからない」「答えたくない」人を除いて分析)

 

図3

図3

 

その上で、保守層、中間層、リベラル層ごとに、マスメディアへの信頼度を分析すると、保守層で69%、中間層で70%、リベラル層で67%となり、ほとんど変わらない。日本では、米国と異なり、マスメディアの信頼度について、イデオロギーによる偏りがほぼ見られないことがわかった(図4)。

 

図4

図4

 

30代以下の4割超は「マスメディアを信頼していない」

ただし、マスメディアに対する信頼度は、世代によって差が見られた。

18~39歳、40~59歳、60歳以上の三つのグループに分けて分析すると、60歳以上の層でマスメディアを「とても」「まあ」信頼していると答えた割合は81%に上ったのに対し、40〜59歳の層は71%、18〜39歳では56%だった(図5)。
年齢が若くなるほどマスメディアへの信頼が低くなる傾向がうかがえる。

 

図5

図5

 

18〜39歳、新聞を「毎日読む」14%、テレビを「毎日見る」29%

そもそも、若い世代を中心に、新聞やテレビなどの伝統メディアから離れる傾向ははっきりしている。

SMPP調査で、新聞を「毎日読む」と答えた18〜39歳は14%、「毎日ではないが読む」を合わせても33%にとどまった。これに対し、「読まない」は67%にのぼり、39歳以下の3人に2人が、日々の生活の中で新聞に触れていない(図6)。

40~50代でも44%が「読まない」。60歳以上でも20%に上っている。

 

図6

図6

 

若い世代を中心にテレビの視聴頻度も減っている。SMPP調査では、18〜39歳でテレビを「毎日見る」は29%、「毎日ではないが見る」は26%。一方、「見ない」は44%に達した。40~59歳でテレビを「見ない」は24%、60歳以上では8%だった(図7)。

 

図7

図7

 

新聞・テレビの報道が「真実」と思う人、66%

また、新聞・テレビといった伝統メディアで「報道される情報は真実だ」と思うか尋ねたところ、「とても」「だいたい」「どちらかといえば」そう思う、という肯定的な意見は、世代全体で66%だった(図8)。

 

図8

図8

 

年代別に見ると、年齢層が上がるほど「真実だ」と考える割合が高くなる傾向があり、「とてもそう思う」「だいたいそう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人の割合は、70代以上では77%、60代は75%だった。一方で、18〜29歳では58%、30代では55%で、20%程度の差がついた(図9)。

 

図9

図9

 

新聞一面のニュース「重要」 40代以上8割、30代以下でも6割超

若い世代は、新聞やテレビといった伝統的なマスメディアへの接触が減っているのは確かだが、マスメディアのニュース判断そのものを信頼していないのだろうか。SMPP調査で、新聞やテレビ、SNSなど、さまざまなルートで流れる情報の「重要さの度合い」について聞いたところ、マスメディアのニュース判断への信頼が大きく崩れているわけではなさそうだ。(図10)。

「新聞の一面に掲載されるニュース」について、「かなり重要」または「やや重要」と考えている人の割合は、60代以上で83%、40~59歳で80%と高いが、18〜39歳でも66%に達した。若い世代で、新聞を読んでいる人は少ないが、それでも新聞の一面が重要だという認識はあるようだ。

「NHKニュースの冒頭に取りあげられるニュース」が、「かなり重要」または「やや重要」と考える人は、60歳以上で78%、と40~59歳で70%だった。

18〜39歳にとっては、「新聞の一面に掲載されるニュース」(66%)に次いで、「かなり重要」または「やや重要」と考えているのは、「Yahoo!ニュースのトップに掲載されるニュース」(59%)で、「NHKニュースの冒頭に取り上げられるニュース」(57%)を上回った。また、この世代は、Twitter(現在のX)のトレンドに載るニュースや、SNSで有名人や友達がシェアするニュースについて、「かなり重要」「やや重要」と考える人の割合が、年上の世代に比べて、10ポイント以上高かった。

 

図10

図10

 

SMPP調査・第1回概要

SMPP調査・第1回調査概要

調査時期 2023年3月
実施方式 18歳-79歳の有権者を対象に、郵送とオンライン(Web調査)の2方式で実施
郵送調査 日本国内に居住する18歳から79歳の男女を調査対象とし、日本リサーチセンターが管理するトラストパネルの登録者から、2020年国勢調査の人口を基準として、地域・性別・年代による層化抽出を実施。初期標本の4460に対して回収数は1901(回収率は42.6%)。3月1日に調査票の入った封筒を発送、3月22日迄に到着した回答を有効とした
Web調査 楽天インサイトが管理する生活意識データパネル登録者に対して調査を実施。配信地域は日本全国、標本規模は2000。なお、性別・年齢(18-19歳/20代/30代/40代/50代/60代/70代)に基づく割り付けを行っており、男女別に18-19歳は34、それ以外は年代毎に161を回収数として設定した。調査への参加を求める電子メールは3月9日に配信され、3月11日までに予定された数の回収が行われた(回収数2000、回収率100%)

*本レポートでは、郵送調査結果を分析に用いた