大森翔子
法政大学社会学部メディア社会学科准教授
1993年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は政治コミュニケーション・政治行動論。主著に「メディア変革期の政治コミュニケーション」(勁草書房)がある。
人々がふだんの生活でニュースを見る際には、どのようなメディア利用のパターンが存在するだろうか。「紙の新聞を契約購読しているが、テレビニュースも見るし、ポータルサイトのニュース欄もよくチェックする」、「テレビニュースをよく見ており、インターネットニュースサイトはたまにアクセスする程度だ」、「お気に入りのニュースサイトがあるが、最近はSNSでニュースを見る機会も増えてきた」など、多様なパターンが想定される。このように、近年における人々のニュース接触のあり方は、単一のメディアへの依存ではなく、複数の手段を組み合わせたかたちで成立していると考えられる。
では、こうした「ニュース接触のパターン」を明らかにすることは、なぜ重要なのだろうか。その理由は、個々のメディアの利用率や重要度を個別に見るだけでは、現代の情報環境の実態を十分に捉えられない点にある。
以下の図1は、2025年に実施した第2回スマートニュース・メディア価値観全国調査(以下、SMPP調査)問56「あなたがニュースを見聞きする時の方法・手段について、ご自身にとって最も外せない(欠かせない)ものを1つ選択してください」について、選択率の高いもの順に並べた結果を示している。テレビ(ニュース番組)の選択率が最も高く42.9%、次いで新聞(紙)が14.4%、ポータルサイトがそれに拮抗する13.9%の選択率であることが読み取れる。
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一見すると、「インターネット時代」と言われる現在においても、テレビニュースが依然として中心的な位置を占めているように見える。しかし、この結果はあくまで「最も外せない(欠かせない)ものを1つ選ぶ」という設問に基づくものであり、人々のニュース接触の全体像を直接的に示すものではない。テレビを「最も外せない(欠かせない)」と回答した人々も、実際には新聞やニュースサイト、ポータルサイト、SNSなどを併用している可能性は高い。また、ポータルサイトやニュースアプリを重視する人々も、完全に新聞やテレビニュースといった伝統メディアから切り離されているとも限らない。
インターネットの発展により、メディア情報環境は単純に新旧メディアが入れ替わるかたちで変化してきたわけではなく、複数のメディアが重なり合い複雑化してきた。本稿では、このような近年の情報環境を前提に、人々がどのような組み合わせでニュースに接触しているのかという「ニュース接触のパターン」に着目し、その多様なあり方を整理することで、日本社会におけるニュース利用の現在地を明らかにしたい。
第1回SMPP調査(2023年)では、「新聞(オンライン含む)」、「テレビ」、「インターネット」などメディアそれぞれについて、「あなたが、ふだんよく読む/見る」媒体を質問したデータを用い、人々のメディア利用について、回答のパターンをもとに共通した特徴を持つ人々のタイプを統計的に分類する「潜在クラス分析」という手法を用いて、利用パターンを整理した[1]。その結果を簡潔に紹介すると、人々のメディア接触は以下の6パターンに分類可能であり、回答者の中でそのパターンに該当する人数の割合は以下のとおりであった。
この結果からは、人々のメディア接触は、大きく分けて伝統メディア中心型・インターネットメディア中心型と分類できることを意味するが、それらはさらに伝統メディア中心型の中でもインターネットメディアへの接触率が高いパターンと低いパターン、インターネットメディア中心型の中でも、伝統メディアへの接触を残すパターンと残さないパターンとに分類できることを示している。また、現状、人々のメディア接触パターンとして所属する人が最も多いのは「インターネットメディア中心型」であることも判明した。
しかし、第1回SMPP調査ではニュースメディアに限らない各メディアへの接触パターンを分析しているため、ニュースを利用の際にも同様のメディア利用パターンが見られるのかについては明らかでない。
そこで、第2回SMPP調査(2025年)では、問43において「主なニュースの情報源」に絞った上で、ふだんの利用メディアを回答してもらった[2]。その回答をハードニュース/ソフトニュース/ニュースサイト・アプリ/SNS/配信系への接触度合いに変数化した上で、第1回調査と同様の分析手法(潜在クラス分析)を用い、「ニュース情報」への接触時に、どのようなメディア利用のパターンが析出されるのかを分析した[3]。
結果は図2のとおりである[4]。各メディアの接触項目(ハードニュース/ソフトニュース/ニュースサイト・アプリ/SNS/配信系)について、算出された選択確率から、各クラスにおける各メディア媒体の接触回数の予測値を算出したものが示されている。

分析からは5つのニュースメディア接触パターンが析出されたことになる。全ての項目に対して「接触しない」と回答した者を無接触型として加え、6つのニュースメディア接触パターンとしてこの結果を整理すると、以下のように解釈できよう。
さらに、表1は、接触パターン別に回答者の属性等の特徴をまとめたものである。それぞれの項目は、各クラスに所属する回答者について、「年齢」は実年齢の平均値を、「大卒率」は4年制大学卒業以上の学歴を持つ回答者の割合を、「政治知識」は同調査の政治知識設問について正解した問題数の平均値を示している[5]。

これらを踏まえれば、「ニュースメディア」に限定したメディア接触質問を分析した主要な結果は、以下の3点に要約できよう。①伝統メディアとインターネットメディアの双方に高頻度で接触する「ニュースジャンキー型」が析出された点、②ニュース接触においてもSNSを主たるニュース接触手段とし、新聞・テレビへの接触が相対的に低い「SNS中心型」が出現した点、③テレビニュースを軸としながらニュースサイト・アプリを併用するパターンが一定割合存在し続けている点である。
まず、第2回調査において新たに確認された「ニュースジャンキー型」は、ハードニュース・ソフトニュース、ニュースサイト・アプリ、SNSといった複数のニュース媒体に高頻度で接触する層であり、第1回調査における「バランス型」や「伝統メディア+ネットニュース接触型」と一部重なりつつも、ニュース情報への関与の強さという点で、より特徴的な集団として位置づけることができる。ただし、人数割合は5%と少なく、政治知識程度は「伝統メディア接触型」、「インターネットメディア中心型」とそこまで変わらず、突出して政治知識を有しているわけではない。
次に、第2回調査において「主なニュースの情報源」に焦点を絞ったデータにおいても、SNSを主軸としつつ、伝統メディアへのニュース接触が低い層が独立したパターンが「SNS中心型」として明確に浮かび上がった。彼らの平均年齢は38.9歳と若く、学歴も平均的に高い。一方で、政治知識程度については、無接触型に次いで平均値が低いことが特徴である。
さらに興味深い点は、「SNS中心型」は27.7%と、3割にも迫る割合で存在していることである。第1回調査において、メディア接触全体における「SNS中心型」は先にも記した通り18.7%であった。ニュース情報に限定した場合、メディア接触全体についてSNS中心型である人数割合よりもむしろ多いという結果が示された。
繰り返し述べている通り、第1回調査では目的にかかわらずメディア全体への接触を、第2回調査ではニュース情報に限定した接触を質問しているため、2023年から2025年にかけて、SNS中心型に移行する人が増加したということを意味するものではないことに注意が必要である。一方で、この結果を考察すると、SNSは、ニュース専用メディアではなく、私的なコミュニケーションや娯楽的情報の利用と不可分に結びついたプラットフォームであるにもかかわらず、ニュースの主要な接触経路としてSNSを位置づけている層が存在し、日常的なSNS利用の中にニュースが組み込まれている状況を反映しているとも解釈できる。
SNS中心型の人々にとっては、ニュース情報はコミュニケーションや娯楽的情報のやりとりの中で断片的に接触するものとして存在している可能性も指摘できよう。この分析の結果から因果関係について特定することはできないが、SNS中心型の政治知識程度が低い点について、SNSを通じたニュース接触は、利用するユーザーの関心のあるトピックに左右されがちである上に、短時間で断片的に行われることが多く、体系的な情報理解に結びついていない可能性も示唆される。
さらに、ニュースに限定した分析においても、「伝統メディア接触型」や「伝統メディア+インターネットニュース型」といった、テレビニュースを中心としながらインターネットニュースを併用するパターンが一定の割合を占めている点も重要である。これは、インターネット時代においても、ニュース接触に関しては伝統メディアを重視している層が識別されることを意味している。人数割合としても、合計で35%程度は伝統メディアへの接触度合いが高いことを示しており、政治知識程度も比較的高いことが特徴である。
SNS中心型が一定程度存在することについて、前節では、ニュース接触の質や政治的知識との関係を踏まえ、憂慮すべき側面がある可能性を指摘した。しかし一方で、SNS中心型であってもニュースに接触している以上、それは単にその人の生活様式や情報環境に適合したニュース接触のあり方にすぎず、過度に問題視する必要はないとする見方も成り立ちうるだろう。すなわち、ニュース接触の経路が異なるだけであり、SNS中心型の人々もニュースから切り離されているわけではない、という解釈である。
この点を検討するうえで示唆を与えるのが、「ニュース回避」の概念である。ニュース回避とは、情報行動の中で意図的に、(少なくとも特定の種類の)ニュースへの接触を避ける傾向を指し(Newman et al., 2022)、近年では「選択的ニュース回避(Selective News Avoidance)」として、ロイター・ジャーナリズム研究所のデジタルニュースリポートなどでも取り上げられている。
第2回SMPP調査では、問48で回答者の選択的ニュース回避の傾向について、「最近、あなたはあえてニュースを避けることがありますか。」と質問し、「頻繫に(常に)ある」から「これまでに一度もない」まで、4点尺度で回答を得ている。
表2は、この回答をもとに、値が大きいほどニュース回避傾向が強くなることを意味するよう変換した変数を従属変数とし、ニュースメディア接触パターンへの所属を示すダミー変数(SNS中心型を参照カテゴリ)を独立変数として、さらに年齢や性別、学歴といったデモグラフィック要因を統制変数として投入した回帰分析(OLS推定)の結果を示したものである[6]。

回帰分析の結果によれば、「SNS中心型」と比較したとき、「伝統メディア接触型」、「インターネットメディア中心型」、「伝統メディア+インターネットニュース型」の回答者は、統計的有意に選択的ニュース回避傾向が低いことが示されている。言い換えれば、「SNS中心型」はこの3つのニュースメディア接触パターンの回答者と比較したとき、意図的にニュースを避ける傾向が相対的に強いことが示唆される。
この結果は、SNS中心型の人々が、SNS上で積極的にニュース情報を探索・取得しているというよりも、むしろSNSという私的・娯楽的情報空間の中で、ニュース情報を選択的に回避しながら利用している可能性が高いことを示している。すなわち、SNS中心型におけるニュース接触は、能動的にニュースを求めた結果というよりも、回避しきれずに偶発的にSNSにおいてニュース情報に接触している側面を含んでいると解釈することができよう。
本稿では、第2回SMPP調査のデータを用いて、ニュースメディアに限定した人々の接触パターンを分析した。その結果、伝統メディアとインターネットメディアの双方に高頻度で接触する層、テレビニュースを軸にニュースサイト・アプリを併用する層、そしてSNSを主たるニュース接触経路とする層など、複数のニュース接触パターンが存在していることが明らかになった。
特に、SNS中心型が27.7%と一定の割合を占めている点は、ニュース接触の場が日常的なSNS利用の中へと組み込まれている現状を示している。一方で、SNS中心型では選択的ニュース回避傾向が相対的に強いことも確認され、SNS空間上でのニュース接触のあり方や質について詳細に検討する必要性も示唆された。
今後の課題として、第一に、今回確認されたニュース接触パターンが今後も維持されるのか、それとも時間の経過とともに変化していくのかを継続的に検討する必要がある。特に、SNS中心型やインターネットメディア中心型において、SNSのニュース接触比重がさらに高まっていくのかは重要な論点である。
第二に、SNS上でのニュース接触が、特定のメディア企業や団体のアカウントをフォローするなどの能動的行動によるものなのか、それともフォローしている友人やアルゴリズムによるおすすめを通じた偶発的接触によるものなのか、さらにはそのニュース情報の内容もメディア企業・団体発信の情報であるのか、一般ユーザー発信の情報であるのか等、様々なケースを区別して把握する必要がある。こうした点を明らかにすることで、人々のニュースメディア接触をより精緻に理解することが可能になるだろう。
[1]第1回SMPP調査(2023年)で使用した質問は問43-1(新聞)、問44-1(テレビ)、問45-1(インターネット)である。詳細な結果については、大森(2024)を参照されたい。
[2]問43の内容と選択肢は以下のとおりである。「あなたが、主なニュースの情報源としているのは、どれですか。下記の媒体・サービスからあてはまるものをすべてお選びください。」
NHKの午後7時のニュースなど定時のニュース番組/民放の定時のニュース番組/NHKのニュースショー(ニュースウォッチ9など)/民放のニュースショー(報道ステーションなど)/民放のワイドショー(めざましテレビ、情報ライブ ミヤネ屋など)/オンデマンド型番組(NHKオンデマンドやTVerなど)/ABEMA、Amazon Prime Video、Huluなどの動画配信サービス/ラジオ、radiko、ポッドキャストなどの音声配信サービス/朝日新聞/産経新聞/日本経済新聞/毎日新聞/読売新聞/お住まいの地域のブロック紙・地方新聞/Yahoo!ニュース(ヤフーニュース)/LINE NEWS(ラインニュース)/SmartNews(スマートニュース)/Googleニュース(グーグルニュース)/NewsPicks(ニューズピックス)/LINE(ライン)/YouTube(ユーチューブ)/X(エックス・旧ツイッター)/Instagram(インスタグラム)/Facebook(フェイスブック)/TikTok(ティックトック)/ニュースの情報源として使っているものはない
[3] 問43の選択肢を新聞、ハードニュース、ソフトニュース、ニュースサイト・アプリ、SNS(LINE/YouTube/X/Instagram/Facebook/TikTok)、配信系(オンデマンド型番組(NHKオンデマンドやTVerなど)/ABEMA、Amazon Prime Video、Huluなどの動画配信サービス/ラジオ、radiko、ポッドキャストなどの音声配信サービス)にカテゴリ化した上で、それぞれのカテゴリに対して各個人の接触度を「接触なし」、「1つ接触」、「2つ以上接触」として変数化し、潜在クラス分析を行った。
[4]分析の対象は第2回調査のフレッシュサンプルである。第1回調査データの分析同様、BICおよびcAICのクラス数の提案は5つであった。
[5]政治知識については問15の質問項目を利用した。「小選挙区の当選人数」「裁判員制度」「戦争放棄条項」「政治リーダーの役職(3問)」の合計6問について、正解数を算出している。
[6]統制変数については、年齢は回答者の実年齢、性別は女性=1男性=0のダミー変数、学歴は大卒以上=1 大卒未満=0のダミー変数を投入している。
[参考文献]